羽のひしゃげた蝉だから

羽化し損ねた蝉を見たことがあるだろうか。半透明な体は歪に歪み、潰れた羽は重石のようである。脚をカサカサといわせて、さも苦しげに地を這う姿。 まさしく、這う這うの体で。後は死を待つだけといったその姿は、今の自分の生き様に似ている。

2023-07-03から1日間の記事一覧

短歌

息を吐くのだって詩だと初回講義で教授が言っていた。 私は不勉強な学生だったので、それ以降の講義は受けなかった。 そんな習わずの歌だから、ところどころグロテスク。 暮れ迫り 蝉姦しく蝉を呼ぶ 夏を過ぎゆく 人は寂しい 母として誰かの赤子抱くよりは …

夏に思う

7日目で蝉は死んでしまうし、7本の向日葵は密かな恋の暗示らしい。幸運の数字と夏が合わさると、何故だか寂しい。 そもそも夏の終わりも、真夏の夕暮れもなんとも心細い気もする。 案外夏は寂しい季節なのだ。 それどころか人生のいかなる時だって寂しい。 …