羽のひしゃげた蝉だから

羽化し損ねた蝉を見たことがあるだろうか。半透明な体は歪に歪み、潰れた羽は重石のようである。脚をカサカサといわせて、さも苦しげに地を這う姿。 まさしく、這う這うの体で。後は死を待つだけといったその姿は、今の自分の生き様に似ている。

短歌

息を吐くのだって詩だと初回講義で教授が言っていた。

私は不勉強な学生だったので、それ以降の講義は受けなかった。

そんな習わずの歌だから、ところどころグロテスク。

 

 

暮れ迫り 蝉姦しく蝉を呼ぶ 夏を過ぎゆく 人は寂しい

 

母として誰かの赤子抱くよりは あなたと見たい夕暮れの空

 

瓶の中だから綺麗と言われてた ノスタルジアを舌で転がす